介護士はなぜ利用者に手をあげるのか

介護士はなぜ利用者に手を上げるのか

5月22日、元介護士の男性が、勤めていた施設で入居者を殺害した疑いで逮捕されたと報道されました。

亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

施設で働く介護士が利用者に危害を加えて逮捕される事件は、これが初めてではありません。

悲しいことに、初対面の人に「介護士です」と名乗ると、

「あ〜最近事件ありましたよね」

と返されることも少なくありません。

なぜこのような事件が度々起きるのか・・・。

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事件の概要

亡くなられたのは、東京・品川区の介護施設に入居していた82歳の男性。

殺害の疑いで逮捕されたのは、事件当時この施設に勤務していた28歳の男性介護士。

4月3日から4日にかけて、逮捕された男性が夜勤中、被害を受けた利用者が胸の痛みを訴えていると119番通報し病院に搬送。
翌日5日、被害者はご逝去されました。

死因は、臓器を損傷したことによる出血性ショックと見られており、肋骨も骨折していました。

被害を受けた利用者は、亡くなる直前、家族に「若い男に蹴られてやられた」と話していたそうです。
これを受けて、施設は防犯カメラの映像を確認後、28歳男性介護士を懲戒解雇。

防犯カメラの映像には、被害を受けた利用者の足を引っ張って部屋に引きずる姿が映っていたと・・・。

そして、5月22日、28歳元介護士の男性が殺害の容疑で逮捕されました。

報道を見て思うこと

また、悲しい事件が起きてしまいました。

亡くなられた男性のご家族はさぞ悔しい思いをされていることでしょう。
決して安くない額のお金を毎月払って、少なからず信頼を寄せて家族を任せていたのに、その結果がこれなんて・・・。

逮捕された男性は、逮捕当初暴行を否認していたようですが、防犯カメラに映っていたという足を引っ張って部屋に引きずり込む行為だけでも十分暴行ですから。
「腰が痛かったから」と説明していたそうですが、まともな援助もできない程なら休みなさいよと声を大にして言いたいところです。

気持ちがまったくわからないわけではない・・・

逮捕された男性が、殺害された利用者に対してどのような感情を抱いていたのかはわかりません。

ただ、こんなことを言うのは不謹慎でしょうが、利用者に対してどうしようもなく苛立ちを覚えてしまうことがあるのは、同じ介護士としてよくわかるのです。

他の利用者の対応中でも構わず、部屋に訪室するまでナースコール連打されたり。

数分おきに起き上がってベッドセンサー鳴りっぱなしだったり。

介助中のセクハラ、胸や股を鷲掴みにされたり、服の中に手を入れられたり。

私は召し使いか、はたまた下僕か?と思うような扱いを受けたり。

認知症の利用者に殴られ蹴られ噛まれ唾を吐かれ・・・。

便を部屋中に塗りたくったり。便まみれの手で殴られたり髪の毛引っ張られたり。

これらは全部私が施設で働いていて実際に体験したことです。

特に、ワンオペ夜勤だったり、就寝や起床介助で忙しい時間帯にこういうことをやられると、もう声を上げて発狂しそうになることが何度も何度も何度も何度も何度もありました。

おそらく、多かれ少なかれ、現場で働く介護士は何かしら怒りが一瞬で沸騰するような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

けれど、ほとんどの介護士は、その衝動を堪え一線を越えないよう踏みとどまっているのです。

介護士も人間ですから、利用者の行動・言動に対して負の感情を抱いてしまうことは仕方ないけれど、それを利用者に向けない工夫を個人・事業所それぞれで考えなければいけません。

現場の介護士を守ってほしい

ニュースで報道されるのは「介護士が利用者に」暴力をふるった事件ばかりですが、上で述べたように、実際には「利用者から介護士へ」の暴言・暴力やハラスメントもめずらしいことではありません。

利用者が被害を訴えれば虐待だーと咎められるのに、

職員が被害を訴えてもまともに取り合ってもらえない、

そんな出来事が多々あります。

また、今回のように、介護士が利用者に何かしました、という事件がニュースで流れるたびに、世間での介護士のイメージがどんどん悪くなっていくのを感じます。
中には、介護士を「他にできる仕事がない人がやる仕事」と認識している人もいるようです。

仕事は楽しいし、自分で選んだこの仕事にやりがいも感じているのは確かだけれど、正直なところ初対面の人に「介護士です」と名乗るのが恥ずかしいという意見も耳にしますし、その気持ちもよくわかります・・・。

こんな現場に嫌気がさして介護から離れる人が出る
→ 人が減って1人あたりの負担が増える
→ ますますつらくなって辞める人がまた現れる
→ 残った人の負担がますます増える
→ 以下、エンドレス悪循環。

実際にこの悪循環に陥っている施設はたくさん見かけます。

国全体でこの悪循環に陥れば、今まで一線を越えず踏みとどまっている人の箍がいつ外れてしまうかもわかりません。

自らを犠牲にしてでも福祉に貢献したいという人は別かもしれませんが、そうでない人は、自分が満たされていない状態で他人のために何かをしようという気持ちにはなかなかなれないのではないでしょうか。

介護士を守ることは、間接的に利用者を守ることにも繋がっていると思うのです。

終わりに:ほどよく休もうね

現状、国や施設が守ってくれない以上、自分のことは自分で守らなければなりません。

身体・体力面でも、精神面でも、人のために働いて自分の健康を損ねるなんて馬鹿げていると私は思います。

ストレスが爆発して利用者に手をあげる→解雇、逮捕
こんなの愚の骨頂でしょう。

利用者に嫌なことをされて思わずカッとなってしまいそうになったら、一時的に他の介護士に代わってもらったり、

体調が優れなかったら休ませてもらったり、

介護の仕事に嫌気がさしてしまったら、休業して他の仕事をしたり。

自分が休むと他の人に迷惑がかかるので、なかなか休むのも躊躇ってしまいますけどね。

でも、逆の立場なら、利用者に手をあげるくらいなら休んでくれよと思います。

生活がかかっていて休むわけにはいかない、という人も多いでしょう。(私もその1人)

それでも、自分のキャパシティを見極め、最悪の事態になる前に適切に息抜きをするべきです、絶対に。

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